2022年6月に改正公益通報者保護法が施行される予定です。施行というのは、その時から有効になり、従わなければならないということです。
ただ、そもそも公益通報とか、内部通報ってなぜ必要なのでしょうか。
この記事では、なんで内部通報制度が必要なのか、どのような内部通報制度が望ましいのかということを説明します。
内部通報はなぜ必要か?
一言で言えば、内部通報制度は自浄作用を働かせることを企業や従業員を守ることがその目的です。
企業で問題があった場合、これを認識して、適切な対応を取らなければ、従業員が害され、企業としても存続することができなくなってしまうかも知れません。
例えば、パワハラが行われている会社の場合、これが改善されなければ従業員は被害を受け続けますし、会社も裁判や労働基準監督署による処分などを受ける可能性もあります。
この時、通常の業務ライン(例えば、営業でパワハラがあったとした場合、営業部の連絡ラインである課長、部長など)でこの問題を吸い上げることはあまり期待できません。そこで、そういう問題を吸い上げやすくするために、通常の業務ラインとは別に、通報を受けるところを作るのが内部通報制度です。
つまり、人で言えば神経のようなものと言えます。
人は病気になると、これを痛みなどとして感知し、脳に情報を送り、適切な対応をとるよう命じることになります。
会社が人だとすると、会社の病気(パワハラや法令違反などの問題)を内部通報窓口が感知し、これをコンプライアンスを統括する部署に送り、適切な対応をとることができるようにするということです。
できる限り内部で解決したい!
ところで、内部通報と似た言葉で「内部告発」というのもあります。これは、勤務先で生じている問題について、役職員が行政機関やマスコミなどの外部の第三者に対して行う通報(告発)をいいます。
会社内では到底問題が解決されるとは思ってもらえないと、人は外部に助けを求めに行きます。
つまり、自浄作用が機能していないということです。
もちろん、とても社内で解決できる問題でなければ裁判などで訴えることも必要ですが、会社という一つの社会における問題については、会社で解決できるのであればそれが当事者にとっても会社にとってもいいものです。例えば友達グループ内の問題などで内部的に解決できるのに、先生や親が出てくることで問題が大きくなりすぎてしまうイメージに近いと思います。
そういう意味では、できるだけ内部通報制度の中で問題を解決していくのが望ましい姿と言えます。
内部で解決できるよう信頼できる制度を作る!
それでは会社内で問題が解決されるためには、どうすれば良いのでしょうか。
それは、しっかりと信頼される内部通報制度を作ることです。
消費者庁が「平成28年度 労働者における公益通報者保護制度に関する意識等のインターネット調査報告書」というものを取りまとめて作成しているのですが、その23頁に面白いグラフがあります。
最初の通報先をどこにしますか?というアンケートに対して、内部通報窓口の設置がない会社では、勤務先と答えたのは全体のわずか38.9%にとどまりましたが、内部通報窓口が設置されている会社では、勤務先と答えたのは全体の70.5%でした。
つまり、内部通報制度があるだけで内部的に解決する動きが増えることがわかります。
この数字をさらに上げるためには、信頼できる通報制度にすることです。
信頼できる通報制度としては以下のようのものがあります。
- 通報者に対する不利益な取り扱いの禁止(通報したことを理由とする解雇、減給などの禁止)
- 通報者に関する秘密保持の徹底(通報者が匿名を希望する場合、通報対象者はもちろん、その他不要な人に漏らさないこと)
- 通報対象者に対する適切な対応処分(通報内容についてきちんと調査して、必要があれば対象者に懲戒処分などをする。他方、問題と判断されない場合にはその理由を説明して通報者に説明するなど)
まとめ
内部通報制度とは、通常の業務ラインとは別に設けられた通報窓口制度で、会社の自浄作用を目的としたものです。
内部通報との関係では、他にも、公益通報者保護法における公益通報との関係や通報窓口担当者が気を付けるべき事項などまだまだいろいろな話題がありますので、今後、それらについても書きたいと考えています。
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