法律とは社会ルールのうち国によって強制されるものと前回の記事で説明しました。
ところで、この「強制されるもの」、つまり「強制力」についてイメージできますか?これはなかなかイメージがつきにくいかと思います。
「強制力」というと、それに従わなかった場合にむりやり手足を縛ってでも従わせるようなイメージを持つかもしれませんがそういうことではありません。
強制力の例として、まず比較的イメージがつきやすいものは犯罪行為を行った場合の刑罰ではないでしょうか。
たとえば、コンビニで万引きをしたというケースを考えてみましょう。
「万引き」は法律的に言えば窃盗罪です。人の家からお金を盗んだりすることと法的には同じ重い犯罪です。窃盗罪などの犯罪行為はさまざまな法律によって定められていますが、一番典型的な法律は「刑法」です。刑法は窃盗について以下のとおり規定しています。
刑法第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
他人の財物(コンビニという「他人」の商品という「財物」)を万引き(「窃取」)した場合は、10年以下の懲役か50万円以下の罰金ということです。ちなみに「懲役」とは刑務所で働くことをいいます。働くことが求められない場合は禁錮といいます。
以上のとおり、万引きすれば懲役を受けたり、罰金を受けたりという刑罰を受けるため、「国(ここでは行政)によって強制される」ことになります。
強制は刑罰によるものだけではありません。その他の法律との関係でも強制はあります。
万引きをすれば、コンビニは、万引犯に対して、損害賠償として、盗んだ代金額の支払いを求めることもできます。これは万引きは刑事法的には窃盗罪に該当しますが、それと同時に民事法的には不法行為(民法709条)にも該当するためです。
なお、民事と刑事についての説明はまたいずれします。
不法行為として代金相当額の支払いをしなければなりませんが、万引犯が支払わなかった場合、どうするのでしょうか。これは、まず民事訴訟という裁判を起こし、支払うよう判決をもらいます。その上で、その判決を使って、万引犯の資産を差し押さえることができます。差し押さえというのは、その財産の処分を禁止して、これをお金に変えて支払いにあてることをいいます。例えば、万引犯の銀行口座を差し押さえて、その預金から代金相当額をコンビニに支払うよう求めることができます。差し押さえるものが不動産のようにお金ではない場合はこれを売ってお金に変えた上で、そこから支払いを受けることになります。
このように、万引犯が支払いたくなくても、強制的に支払いを得ることができるので、「国(ここでは裁判所)によって強制される」といえるのです。
以上の通り「国によって強制されるもの」というのは、法律に違反した場合は、刑罰を課されたり、裁判手続きにより強制的に支払いなどがされるという意味です。
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