今さら聞けない「憲法」とその他の法律の違い

法学入門

「憲法改正」とかの文脈で憲法をいう言葉はよく耳にしますが、そもそも憲法って何なのか理解している人は少ないように思います。

でも、「憲法ってなに?」なんて聞くのも恥ずかしいと感じる人も多いと思うので、本ブログでは、こっそり憲法とその他の法律の違いをざっくりと紹介します。

憲法とは? ①最高法規

教科書的にいえば、「憲法」とは「最高法規」なんて言われたりします。最高法規というのは、分かりやすくいえば、その国で1番強い法律ということです。

1番強い法律というのは、憲法に反する法律は認められないという意味と思ってください。

例えば、日本国憲法には第14条に平等権という権利が定められています。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

日本国憲法第14条1項

ここでは、すべての国民は法の下に平等であると定めらています。なので、国民は平等に扱ってもらえる権利、平等権を有しているといいます。

他方、昔は尊属殺人といって、子供が親を殺害した場合には普通より重く罰するという法律がありました。

自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス

旧刑法第200条

要するに自分や結婚相手(配偶者)の直系尊属(両親、祖父母、ご先祖様)を殺害した場合には、死刑か無期懲役しかないという非常に重い犯罪が定められていました。

この規定は、尊属殺人ではない普通の殺人の場合は、死刑、無期懲役に加えて、5年以上の懲役という刑罰もあるところ、被害者の子供や子孫であることを理由に刑罰を重くしているので、平等ではないと争われたことがあります。

最高裁判所は、結論として、尊属殺人は憲法第14条1項に違反するとして、違憲無効と判断しました。

このように、憲法が最高法規だから、これに反する法律は無効となることになります。これが、憲法の最高法規性です。

憲法とは? ②国に向けられた法規

また別の視点として、憲法はそもそも誰に向けられた法律なのか?という点が他の法律と異なります。

例えば、殺人罪を定める刑法は誰に向けた法律でしょうか?

刑事事件は国と個人の間を規律する法律です。つまり、国家が個人に、「人殺しをしたら刑罰をするよ」ということで、個人に対して向けれられています。

個人間の争いに関する民事事件についても同様です。誰かの権利を侵害したひとは、その人に損害賠償しなければならないというのが民法上の不法行為(民法第709条)であって、これもまた、国民に「誰かを傷つけたりしたら損害賠償しないとだめですよ」と個人に対して向けられた法律です。

民事と刑事の違いについてはこちらの記事をお読みください。

これに対して憲法は国に対して向けらた法律なのです。

先ほどの平等権を見てみても、国が制定する刑罰が個人を平等に扱っていなかったらダメですよ、ということを定めており、国家に対して向けられた法律であることがわかります。

もっとわかりやすい例として税金に関する憲法第84条があります。

第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

日本国憲法第84条

国家は税金(租税)という形で国民から財産を奪ってきたという歴史があったことから、国家が個人から税金を取るためには法律がなければできませんよ、と国に向けて制限しているということになります。

結局法律によって税金取られちゃうんじゃん!と思うかもしれませんが、法律を作っているのは誰かというと、民主主義のもとでは、自分達が選挙で選んだ人たち、つまり自分たちということになりますので、何の根拠もなく税金が増やされるのは大違いなのです。

民主主義についてはこちらの記事もご覧ください。

まとめ

このように憲法は我々個人ではなく、国に対して向けられ、国の権利を制限する法律であるということに大きな特徴があります。

憲法改正の議論もなされていますが、これはつまり、国家の権利を制限する憲法が改正されるので、国民の権利が奪われることにもつながりかねません。憲法改正に関するニュースはかかる観点から読むとわかりやすいでしょう。

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